「一冊、一室。」にいたる、書店裏での打ち合わせ。 「一冊、一室。」を妄想する旅。本という窓を開いて出会った人、風景、もの……。毎月どこかでおこっている人、風景、もの×森岡書店を「カケル」としてお伝えするこの不定期連載。「UU ceramic jewelry and objects」として陶磁器でジュエリー、オブジェを製作する作家・小駒眞弓さんです。 



こごままゆみ●2004年、多摩美術大学工芸学科陶プログラム卒業。卒業後から作家活動を始め、2009年に「UU ceramic jewelry and objects」を立ち上げる。通称ううちゃん。 




——森岡書店では、2015年、2017年、そして今年も隔年で必ず小駒さんに展示をしていただいています。小駒さんとは森岡書店銀座店のオープニングのときに、外壁や壁塗りで大変お世話になりました。 (※工芸青花で連載中の[森岡書店日記]の2015年4月12日からの数週間には、店主が小駒さんと小駒さんのご主人で「飛松陶器」を主宰される飛松弘隆さんに大変助けていただいた様子が書かれています) 



小駒 夫が茅場町時代の森岡書店で個展をしたご縁で、立ち上げのお手伝いをすることになりました。夫は茅場町の森岡書店が初めての個展で、その後の方向性が定まるきかっけになるような展示をさせていただきました。  



——飛松さんといえばランプシェードですよね。銀座店のカウンター上にもつけています。上海でもランプシェード展をされていましたね。  



小駒 そうですね。海外でも展示ができるような作家として、森岡さんにはその流れを作っていただいたと思います。実は、私も森岡書店銀座店が初個展だったのです。立ち上げのお手伝いをした流れで、森岡さんと私の共通の友人から「ううちゃんもやってみたらいいのに」とお話をいただきました。 


——記録には2015年6月16日からとなっています。銀座店のオープンが5月5日でしたので、早々にしていただいたのですね。それからもう3回目。毎年、小駒さんは宮沢賢治の『虹の絵具皿(十力の金剛石)』とともに展示をされます。この物語にはどういった意味があるのでしょうか? 



小駒 私が陶磁器に惹かれるようになったのが、子どものころによんだ「虹の絵具」なんです。王子と大臣の子どもが、ちょっと横柄な感じの子どもなんですけど、虹のふもとにあるルビーの絵具皿を探しに行く、という話なんですが。 その途中で鉱物の花畑の場面がありまして。りんどうの花は刻まれた天河石という風に美しい表現でかかれているんですが、漢字のルビが天河石(アマゾンストン)、猫睛石(キャッツアイ)、紫水晶(アメジスト)、瑠璃(ラピスラズリ)と印象的だったんです。金剛石ってダイアモンドってことなんですけど。 もともと石を拾うのが好きな子どもだったので、うわーってなって。  

 高校時代も石の成り立ちにも興味があったので地学を勉強したりしていました。美大に入ってからはずっと大きなオブジェを作っていたのですが、石と宝石をつなぐという意味でジュエリーも作るようになったんです。 




——宮沢賢治は石好きであだなが石っこ賢さんだった、と高校の国語の授業で習ったのを思い出しました。小駒さんは、石っこううさんだったんですね。  

 毎年、同じ本で展示をされていますが、宮沢賢治の他の作品にはインスピレーションをえるものはなかったんでしょうか?  


小駒 本を変えるのではなく、あえて同じ短編で続ける。むしろそれがいいかなあと思っているんです。毎回同じ短編でも掘り下げられることはたくさんあり、毎回違う表現もできるんじゃないかと思って。 



——これまでの2回と今回は、同じようでいて少しずつ違う、と。  



小駒 初回は、タイルの平面作品を作りたいと思っていて。個展も初めてするし、宮沢賢治の本を通じて自分を見直そうと考えたんですね。コンセプトを改めて見直そうと。見直すなかで、石が好きというところから始まって大学でやきものを専攻して、石とやきものの組成の近さを在学中に知って「あ、なるほど」と気づいたんです。石がする結晶化ということを、私はやきものを通じて自分の手でさせたいんだな、て。



 ——石の結晶化を自分はやきものでする、ということですか???  



小駒 石ができるのは地球のいろいろな作用や年月の積み重ねがあって生まれたものであって。石と組成が近いやきものなら、私の手で作れる石、結晶体になりうるのかなと。やきものが結晶化する、というのは、私の工程で“彫り”を入れるという作業の積み重なり、作業時間の積み重なりが結晶化に変換できるのではなかろうか、と。 





小駒 そうして作ったタイルをキャンバスに貼付けていき、ジュエリーのパーツを貼付けて、平面作品を作ったのが第一回目だったんです。そこから発展したのが前回のタイルのレリーフ作品。やりたいことがおさまってきているので、今回もその延長でタイルのレリーフを作っています。 −−昨年の額に入った作品に比べて、少し大きいですね。 小駒 前回は、鉱物標本のように額におさまるようにしていたのですが、今回は大きいものもありますね。森岡書店の展示に向き合うと、いつも自分の原点がはっきりするんです。タイル作品が確立したのも2回目の展示のおかげでしたし。


 −−そういっていただけてうれしいです(笑)。


 ※ 小駒さん在廊予定 

11日は13時〜20時、 12〜14日は15時〜19時、 15、16日は13時〜20時と毎日在廊してくださいます。