「一冊、一室。」にいたる、”書店裏”での打ち合わせ。
「一冊、一室。」を妄想する旅。
本という窓を開いて出会った人、風景、もの……。
毎月どこかでおこっている「カケル 森岡さん」を伝えていく連載。
エバゴスのデザイナー、曽我部美加さんとの話。
エバゴスが生まれた時代背景とは。

No.2 エバゴスも生まれた「生活工芸」の時代


エバゴスが生まれる場所には、様々な、「これはなんだろう?」がたくさん。


森岡:「エバゴス」が1997年にスタートした、ということも興味深いと思っていて。実は今、「生活工芸」の成り立ちについて調べているんですけれど、「生活工芸」の源流も、だいたいその時期ということなんです。木工作家の三谷龍二さんの著書にも、生活工芸の源流をたどると2000年前後にあると書かれているんですね。その時代を見渡すと、例えば書店という分野だと「ユトレヒト」ができたり「カウブックス」ができたり。今ではあちこちで開催されているトリエンナーレやビエンナーレの始まりである、「横浜トリエンナーレ」もこの時期なんです。何か明らかにこの頃、文化が変わった、という節目を感じているんです。

曽我部:確かに、やりやすい時期に始まった感覚はあるかもしれません。その頃、セレクトショップも増えましたしね。ものに対しての見る目が、それまでとは変わってきている時期だった気がします。私みたいな小さな個人だと、「商品を見てください」と言っても見てくれなかったようなところが、見てくれるようになった。個人を認め始めた時期だったように思いますね。インディーズブランドっていうのもありましたよね。「いい、悪い」を決める基準が、企業という大きな単位ではなく、バイヤー個人にあった、そんな時代の始まりでした。タイミングがよかったのかもしれませんね。

編集担当・八木さん:皆川明さんがミナペルホネンを始めたのも1900年代の終わりでしたね。その時代といえば、日本はバブルが崩壊し、経済的に危うかった時代。でもだからこそ、曽我部さんや皆川さんなど、その世代の大人たちが、「もっと面白いことをやろうよ」って新しい価値観が生まれた時代なのかもしれないですね。

森岡:生活の隅々にインターネットが普及し始めつつあったことも大きいのかなと。その当時はブログくらいだったと思いますが、その後、作家の工芸品とか本などが、SNSに登場してきて。個人が顔を持った時代になった。そしてそれが拡散していくようになりましたよね。

曽我部:今はそれがすごいですよね。うちは直営店もホームページもなくやっていますから、疎いのですが、インターネットの普及で、個人の人がブランドを作りやすい時代になったのかしらね。

森岡:そう思いますが、そこから続けていけるか、ということにおいては、本質的なところは変わらないと思います。

ー続きますー


プロフィール:
曽我部美加
デザイナー。1997年にエバゴスを設立。カゴや帽子などをモチーフにしたバッグをはじめ、サイフ、靴、インテリア小物、服なども手がける。

インフォメーション:
「EB.A.GOS バッグヲツクル」
¥8,000+税
一冊ごと違う付録がついたスペシャルエディション¥20,000+税も10部ご用意。

森岡書店での展示は
7月3日(火)~8日(日)
13:00~20:00
曽我部さんの在廊予定は8日(日)。