「一冊、一室。」にいたる、”書店裏”での打ち合わせ。
「一冊、一室。」を妄想する旅。

本という窓を開いて出会った人、風景、もの……。 毎月どこかでおこっている人、風景、

もの×森岡書店を「カケル」としてお伝えするこの不定期連載。
 

今回のカケル人は、TOKIIRO 近藤義展さん、近藤友美さんです。 


TOKIIRO 

多肉植物に特化したアレンジを提案する近藤義展、近藤友美とのユニット。 グリーンデザイン、ガーデンデザイン、ワークショップ開催など多岐にわたる活動の中から、空間(器)に生きるストーリー(アレンジ)を創作する。 著書に『多肉植物生活のすすめ』(主婦と生活社)とその英語版『Stylish SUCCULENTS』(TUTTLE)、『ときめく多肉植物図鑑』(山と渓谷社)。 


————今回は、2017年に出版された『多肉植物生活のすすめ』の英語版にあたる『Stylish SUCCULENTS』の出版記念ですが、本について教えてください。  


義展 『多肉植物生活のすすめ』は日本語以外にハングル、英語、中国語の繁体字に訳されているんです。ハングルと中国語版は、日本版とほぼ変わらないデザインなんですが、英語版は「表紙も変えていいですか?」と現地(香港)の出版社から連絡をいただいて、表紙の写真からして全然違うものになりました。内容はだいたい一緒なんですが、レイアウトは少し変わっています。 


友美 ハードカバーにもなっていますし、判型も違うんですよ。英語が読めなかったとしても飾っておくだけでいい。写真集のように楽しめます。  


義展 タイトルも『Stylish SUCCULENTS』で、全然“すすめ”感がない(笑)。インスタを見ているとロシアの方が買ってくれていたり、ポートランドの大きな書店に並んでいたりと、英語という言語になったからならではの広がりを感じます。 


————TOKIIROのおふたりが表現する多肉植物アレンジからは、盆栽や華道のような芸術性を感じます。2017年5月に森岡書店で展示をしていただいたときも、多肉植物というかわいらしいイメージとは違った姿や、いつも見慣れているはずの店舗が別の空間になったようで驚きました。


義展 そうですね。森岡書店では、中央にぽつんと多肉の寄せ植えを置くという展示で、インスタレーションに近かったですね。照明も変えさせていただきましたし。


————毎年展示をされている馬喰町のギャラリー『組む』さんでの展示も、印象的でしたね。細い竹で仕切られた細い道の上を歩いていくと、その奥には多肉がおいてある。白砂がまかれていて、まるで参道を歩いているようなおごそかな気分になる(笑)。砂に足をとられながら歩いて、そうやってやっと多肉にたどりつくと小さな芽が出ている、という。  


友美 あの新芽を出す姿がいいんですよね。多肉って芽が出たり花が咲いたりするイメージがないですよね。紅葉もしますし。多肉からあんな形で新芽が出てくるなんて信じられない。きゅんとします。


 ————組むさんでの展示が森岡書店での展示とはまた全然違って、毎年楽しみにしています。 


義展 森岡書店は書店ということもあって、本の世界観を空間で再現するようにしています。昨年の『ときめく多肉植物図鑑』の場合は、図鑑でしたからひとつひとつじっくり個性をみてもらいたい、と寄せ植えするような見せ方はしなかったんです。  『組む』の場合は、毎正月の書き初めみたいなもの。「今年はこうあるぞ」という決意をあの場で表現させてもらっています。


 ——書き初め!決意ですか?  


義展 最初の展示タイトルは「心静かに、植物(きみ)の声をきく」だったんです。多肉ってあまりにも過酷な環境で育ってきていて、何億年とかけてその環境にあうようなかたちに変化している。つらいなかで文句も言わずにただ受け入れて。植物というのはしゃべりませんが、世話をしているとどうしてほしいのかわかるような気がしていて。多肉と生活していると声が聞ききたいくらい、この子のことを知りたいと思うわけです。  

 今の地球環境も温暖化だったりで、過酷な状況になっていますよね。そこには人間がやらかしてしまったことが原因であることも多い。僕は、人間として地球や植物にできることないかな、と考えていて。  植物をよく観察していると、人として今後の人生、哲学的なことを教えてくれるから、多肉に耳を傾けてほしい、という意味を持つ展示をしたんです。


 ————なるほど。トークイベントで義展さんが植物を通じて、世界平和や愛について話してらっしゃいますよね。それを聞いて合点がいきました。  


義展 僕たちは多肉を通じて「愛」を伝えたいんです。なかなか愛って言いづらいですよね。でも、愛はいろんなところに存在していて、人を人をつないだり、ものと人をつないだり。忙しいとか、自分のことだけのタスクをするだけで終わってしまうと、目の前にあるものごとすら心をくだけなくなってしまう。 それは寂しい。ですから、多肉を育てることで伝えたいのは、愛なんですよ。 


 ——植物と愛を結びつけるのが壮大ですね。  


義展 もともと植物好きとか園芸店で働いていたから多肉を始めたわけではなく、表現したいことがあってそれに多肉があっていたから、そういう発想になるのではないでしょうか。


 ——本で紹介している多肉のアレンジと、空間を使った多肉のアレンジは別物なんですか? 


義展 いや、実は一緒で。本のなかのアレンジも展示も、器なのか空間なのかの違いだけで、世界を作るというのは基本的に一緒。作るイメージは、そのときどきで違うんです。器、空間からインスピーレションをもらうこともありますし。今回の森岡書店の展示では、森岡さんの言葉からもインスピーレションをもらいました。 

 



——それは楽しみです!! 

 ところで、テレビ東京のドラマで『デザイナー渋井直人の休日』の五話で、『ときめく多肉植物図鑑』の装丁が登場しましたよね。デザイナーである主人公のアシスタントがデザインする、というていで。 


友美 そうなんです。原作マンガのなかに多肉と書かれていたそうでお話をいただきました。ドラマのデスクまわりにも本のなかで使われていた多肉の写真が貼られていて。 


義展 3話から作り始めて5話で完成するんですけど。ドラマを見ていて、デザインがあがってきた感動がもう一度味わえた、という(笑) 


——このドラマの主人公の趣味思考や恋愛に右往左往する様子が人ごととは思えない!という声を他方からも聞いていて。今から見逃し配信で見ようと思います!

 






TOKIIRO Exhibition 

2019 2019年3月19日(火)~24日(日) 

東京 森岡書店 銀座店 

13:00~20:00