「一冊、一室。」にいたる、”書店裏”での打ち合わせ。
「一冊、一室。」を妄想する旅。
本という窓を開いて出会った人、風景、もの……。
毎月どこかでおこっている「カケル 森岡さん」を伝えていく連載。
エバゴスのデザイナー、曽我部美加さんとの話、最終回は
『EB.A.GOS バッグヲツクル』の成り立ちについて。

No.3 ものづくりの道のり、作り手の道のりを一冊に


『EB.A.GOS バッグヲツクル』を見ながら、本作りの話が続きます。



森岡:本の中で、毎シーズン、夢にデザインイメージが現れてくるっていうことが書かれていて。それが面白いと思っていて。

曽我部:必ず、夢に出てきます。それを見ないと終わらないんです。そういうことありませんか? 夢のお告げ。デザインに煮詰まっている最後の最後に夢に現れるんです。目覚める間際に「パンッ」てイメージが出てくる。自分自身で「これでもう大丈夫」というのが決められないんでしょうね。ずっと頭の中で「ああでもない、こうでもない」というのが巡り続け、最後に夢を見る。その夢が現れると終わっていいんだなと思うんです。あ、もちろん展示会の期日が私の背中を押すということもありますけど(笑)。本作りの過程でもありましたよ。

森岡:本を作ろうというイメージはいつ頃からあったのですか?

曽我部:本をめくる、という感触が好きだったので、漠然といつかはと思ってはいました。でも機会がなくて。きっかけは5年前の竜巻ですね。この地域に竜巻が発生して、大きな被害にあったんです。うちの倉庫も全壊してしまって。でもたまたまその少し前に、倉庫の中のサンプルを整理して箱に入れていたんですね。竜巻のあと、全壊した倉庫に駆けつけたら、倒れた柱や壁の下で、サンプルの入った箱がキープされていたんです。8割は飛ばされずに残っていました。その時ですね。今までのアーカイブを残したい、本にして残したいと思ったのは。それが奥底にずっとあって、2年前に編集者の八木さんに相談したんです。

編集担当・八木:曽我部さんの中には、アーカイブを残すという意味だけでなく、作り手の方達のことを残したいという思いもあったんです。今の状態が、すごくパーフェクト。このパーフェクトの状態を一冊の本にしたいって。

曽我部:メンバーの家族とか両親とか兄弟とか、たとえ身内でも、それぞれがしている仕事をリアリティを持ってわかってはいないと思うんです。だからこそ、この本を作って、少しでもわかってもらいたい、というのがありました。

森岡:本というものは、100年後にその扉が開く場合もある。100年後の誰かが、100年前のエバゴスの物作りについて知る感動って、やはりウェブで得るものとは違うと思います。

曽我部:うちは、埼玉県の越谷という都内からも遠いところでやっていますから、展示会に来てくださったお客様を楽しませたい、という思いがあって。例えば、エバゴスの過去のDMをお皿に見立てて、私が好きな柿の種と、テーマに合わせた手作りのお菓子をお出しします。

森岡:来るからには楽しませたいという、エンターテイメントな心ですね!確かに僕も、森岡書店に来てくださったお客様に、銀座のお茶スポットを紹介したり、せめて何かを持って帰ってもらいたくて、書店が入っているビルの歴史を話したりします!

曽我部:本作りでも、わかる人にはわかるっていう本ではなく、そこに何かぽろっと、遊びだったり、面白みの要素を入れたいというのがありました。かっこよすぎる本ではなく、男前のある感じにしたかった。だからこそ、写真と文章を両方入れたいというのがありました。写真は写真、文は文としながら、読み込ませる本にもなったと思います。


見返し部分のデザインにも遊び心が!


森岡:エンターティナーだ!

曽我部:森岡書店での展示では特注のミニバッグのオーダーも受け付けます。私自身、個人のお客様とお話しする機会はなかなかないので、在廊時にはできるだけたくさんの方とお話をしたいと考えています。

プロフィール:
曽我部美加
デザイナー。1997年にエバゴスを設立。カゴや帽子などをモチーフにしたバッグをはじめ、サイフ、靴、インテリア小物、服なども手がける。

インフォメーション:
「EB.A.GOS バッグヲツクル」
¥8,000+税
一冊ごと違う付録がついたスペシャルエディション¥20,000+税も10部ご用意。

森岡書店での展示は
7月3日(火)~8日(日)
13:00~20:00
曽我部さんの在廊予定は8日(日)。