「一冊、一室。」にいたる、”書店裏”での打ち合わせ。「一冊、一室。」を妄想する旅。本という窓を開いて出会った人、風景、もの……。毎月どこかでおこっている「カケル 森岡さん」をお伝えしていきます。キャンドルアーティストのマエダサチコさんとの打ち合わせ、後編です。


↑ケーキ、花……。本物と間違えそうなほど精巧なマエダさんのキャンドル。


森岡:プレゼントにキャンドルっていいなあと思っているんです。私も差し上げたり、いただいたりするんですが、マエダさんはキャンドルをプレゼントされたりするんですか? 

マエダ:キャンドルを作り始めた17、18歳の頃はよくあげていましたね。留学している友達が多くて着物柄とか作って着物の端切れにお包みして、お土産として渡していました。かわりに友人に現地のキャンドルを送ってもらって、カットして分析してみたり。国によってモチーフに個性があって、アメリカはケーキとかお菓子が多いんですけど、オランダはきのこやてんとう虫などかわいいものが多いとか。 

 森岡:国ごとに個性があるんですね。 

マエダ:プレゼントにするって教室の生徒さんからよく聞きます。うちに習いにくる方って20代から60代後半まで幅広いんですが、50代に入られるとキャンドルを習って仕事にしたいというより、美しいものをつくりたいと思われるんですって。 だんなさまに先立たれる方もいて、お仏壇に飾りたいといって作られる方もいるんです。お供えにしたいとお花のキャンドルを作る方が多いかな。 


↑バラ、シャクヤク、パンジーなど美しい花モチーフ。 


 森岡:それは良い話ですね。花といえば、東北の工芸で削り花っていうものがあるんですよ。コシアブラの木を削って花に見立てて、お彼岸にお墓に備えるものなんですが。今年の山形ビエンナーレで「畏敬と工芸」というテーマで展示する予定なんです。花には意味がありますよね。花のかたちをしたものに火を灯せる、ということに深い畏敬の意味があると思います。 

↑9月1日から24日まで開催される山形ビエンナーレ。沖潤子さん、橋本雅也さん、サカキトモコさんに作品協力いただき、文翔館 3階第一・第二会議室で展示予定。


森岡:ところで、今回の本の写真やデザインがシックでしたね。

編集の至田さん:かわいらしいイメージのマエダさんですが、実はかっこいいものが好きと打ち合わせで聞きまして。フランスのクラシックなお菓子をイメージして、背景は黒にして落ち着いた大人っぽい感じにしていただきました。 

森岡:これが今のマエダさんに一番近い世界観なんですね。 

マエダ:黒の背景にあわせて作ったキャンドルの色も考えました。私、お題やリクエストにあわせるのが好きなんですよ。自分の希望だけをかたちにするより、幅が広がります。 

森岡:おどろくほどたくさんのキャンドルの作り方が紹介されていますが、こんなのせてしまって大丈夫なのでしょうか? 

マエダ:まだまだあるので大丈夫です(笑)。こういうの作りたい、と考えるのがすごく好きなので。男性が好みそうな色や柄もたくさんあるので、森岡さんもぜひ作ってみてください。


プロフィール 

マエダサチコ 

アートキャンドル協会理事長。Candle.vida主宰として、東京、大阪、仙台でスクールを展開。子供のころからの趣味であるキャンドルを1998年に仕事として始め、当時日本には存在しなかったドーナツや花瓶に花がのったキャンドルなど、オブジェとしてのキャンドルを作り始めた第一人者。 2000年からキャンドルスクールをはじめ、現在は雑誌、テレビ、CM、展示などで本物と見間違えるような繊細で毒のあるかわいいキャンドルを作っている。著書に、『キャンドルづくりの本』(主婦の友社)、『キャンドルでつくるスイーツ』(文化出版局)がある。 candlevida.com