「一冊、一室。」にいたる、”書店裏”での打ち合わせ。 「一冊、一室。」を妄想する旅。 

本という窓を開いて出会った人、風景、もの……。 毎月どこかでおこっている「カケル森岡さん」を伝えていく連載。 今回はエバゴスのデザイナー、曽我部美加さん。 20周年を記念して作られた『EB.A.GOS バッグヲツクル』出版記念展の打ち合わせ。 曽我部さんの「巻き込み力」の話から始まりました。


No.1 人を巻き込んでいく力

 エバゴスのアトリエにて。打ち合わせは始まりました。 

森岡:今日はありがとうございます。あらためてですが、「エバゴス」の20周年でこの本を作られたということで。始まりは1997年。私個人の話でいうと、この年に社会に出たので、ああ、20年立つんだと思いました。

  
ホワイトボードのメモが嬉しい。

曽我部:エバゴスを始める前は、洋服の仕事から始まって、企画会社で靴のデザインをしていました。そのあとバッグのデザインに関わることになったのですけれど、そしたら、思いの外、バッグに取り憑かれてしまったんです。 

森岡:本の中にも書かれていますが、「バッグ」がブランド名である「エバゴス」に隠れていたっていうエピソードにびっくりしました。 

曽我部:苗字である「SOGABE」を逆さにして「EBAGOS」。その中に「BAG」がね。私自身もびっくりしました。曽我部(SOGABE)は主人の苗字なんですけどね。      

森岡:そうでしたね。そういえば、妹さんも「エバゴス」で働かれていますね。 

曽我部:もう創業当時からですね。最初は週末だけ手伝ってという感じだったのですけれど、いつのまにか巻き込んでしまいました。 

 エバゴスのコウジョウの道具たち。エバゴスのバッグのために作られた。

森岡:本を読んでいても思うのですが、本当に曽我部さんの巻き込み力がすごいなと。 「エバゴス」では今、42名の方が働いているということにも、すごいなと。

曽我部:縁あって知り合った人が、たとえ最初はその道のプロじゃなくても、「好き」という部分が垣間見えると、私自身がそこを深くしてしまうということがあるのかもしれません。私が知らない間に、夫(エバゴス社長)も革という素材に詳しくなっているし。夫は元々はスカイスポーツの仕事をしていたんです。パラグライダーの。その事務所の名前が「EBAGOS」だったんですよ。 

森岡:そうだったんですか! 

曽我部:それで、私がバッグの事業を始める時に、ブランドの名前を悩んでいたら、たまたま机に置いてあった、夫の会社の「EBAGOS」のロゴが目に入って。よく見たら「BAG」が隠れているじゃないですか。「えーっ!」と鳥肌が立つ思いがして。それで使わせてもらうことにしたんです。 

森岡:やはり曽我部さんの巻き込み力はすごいです! 旅先での出会いとか、場当たり的な出会いもとにかくすごいなあと。 

 曽我部:(笑)よくそんなんでね。計画なしでやったなあと。 

森岡:野生の勘が鋭いんじゃないかと感じます。 

曽我部:その通りですね。必ず節目節目に素敵な方に出会っている気がします。今ではエバゴスに欠かせない、北欧を案内してくれるカーステンもそのひとり。事業を始める頃、帽子の材料を売ってもらうためにお会いして、そしたら意気投合して。いろんな場所の素材や生地を見せたいと言ってくれたんですね。彼は仕事を2週間休んで、車で北欧を一緒に旅してくれたんですね。旅の途中のノルウェーで入ったミュージアムで、オリジナルの素材を作ってもらえることになって。その素材でバッグを作ったんですが、すっかり味をしめてしまったんですね(笑)。その経験から「手に入りようのない情報は、自分の足で歩かないと入らない」ということがわかった。以来、ずっとカーステンと足を使って旅して、織物や生地を探して回っているんです。そして、本当に勘が頼り。「あそこに煙突があるから、工場があるはずだ!」と、とにかく向かってみて。いい人に出会うと次の人につながる。 

森岡:見つけた時の感動がありますね。 

曽我部:見つけた時に、日本の企業が入っていたりすると、ガクンとなるんですけどね(笑)。対応はスムーズなのですけれど、じゃあ、次に行ってみるかって。そんなふうに旅をしています。 

森岡:まさに狩猟ですね。毎年狩猟に出ているんだなーって、この本を読むと思います。 

曽我部:私は英語がほとんど喋れないから、自分が作ってきたバッグの写真を見せながら、イメージを伝えます。そうすると、なんとなく掴んでくれて。回を重ねるごとに、イメージの共有が深まっていきましたね。人に恵まれているんだと思います。 

続きます

 ープロフィールー

曽我部美加 

デザイナー。1997年にエバゴスを設立。カゴや帽子などをモチーフにしたバッグをはじめ、サイフ、靴、インテリア小物、服なども手がける。 

ー インフォメーション ー

「EB.A.GOS バッグヲツクル」 ¥8,000+税 一冊ごと違う付録がついたスペシャルエディション¥20,000+税も10部ご用意。 森岡書店での展示は 7月3日(火)~8日(日) 13:00~20:00 曽我部さんの在廊予定は8日(日)。