「一冊、一室。」にいたる、”書店裏”での打ち合わせ。その様子を「カケル」としてお伝えしていきます。今回のカケルのお相手は、フラワースタイリスト・平井かずみさん。著書を出されるたびに森岡書店でも、必ず展示をしてくださっています。新刊『花と料理』は料理家・渡辺有子さん、フォトグラファー大段まちこさんとの共著。「部活」として始まった、という花と料理を表現することについてうかがいました。

 


森岡 今回の本は、『誰にたのまれたわけでもなく、「部活」と称してはじめた……』と裏表紙にも書いてあります。本を作る前提ではなく平井さん、渡辺さん、大段さんの個人的な活動から始まったんですか。 


平井 そうなんです。部活として、2ヶ月に1回集まっては、私は花を、渡辺さんは料理を作って、ときにはコラボをして。それを、写真を撮りためていたんです。 


森岡 どうしてその部活は始まったんですか?  


平井 2016年に『LORO』という雑誌の特集で、「植物を愛でて、いただく」という企画があったんですね。まず渡辺さんがその依頼を受けられて、花とからめるなら平井さんと、と私を誘ってくださったんです。フォトグラファーは誰がいいかな、となったときに大段さんにお願いしたい、と。その撮影がとっても新鮮で楽しくて。このまま1回で終わるのはもったいない、とこの3人で部活として続けたんです。 


 森岡 それぞれにご多忙なのによく続きましたね。 


平井 何度も存続の危機はありました(笑)。カレンダーにしようか、と始まったんですが、渡辺さんが「12ヶ月はよくあるし、ここは365日にしよう」と言い始めて。 


森岡 渡辺さんといえば365日ですもんね(※『365日。小さなレシピと、日々のこと』という本を出版されています)。それにしても、12から365に増えるとはすごい部活ですね。 


平井 一番最初、とにかく一度やってみようと集まったんです。私は花を、渡辺さんは料理の材料を持ち寄って、「花と料理」を表現して30パターンくらいは作って撮ってもらって。もうみんな、へとへとになるくらい。撮り終えたときに、大段さんが「これじゃ全然だめ」とおっしゃったんですよ。 


森岡 全然だめ!? 


平井 ただ数を作っているだけで、全体のテーマがない、花と料理のコラボになってないよって。もうごもっともで、私も渡辺さんもちーん、となっちゃって(笑)。大段さんはプロフェッショナルな方で、スタイリングが素敵じゃないと「これでいいの?」ってシャッターを切ってくれない。私、お花のスタイリングや撮影でだめだしをもらうことがなくなっていたので、大段さんからのだめだしはとてもありがたかった。 


 森岡 それぞれの世界のプロだからこその厳しさですね。 


平井 いろいろとみんなで考えて。この本には実は、隠れた共通テーマがあるんですよ(※このテーマについてはトークイベントで)。部活っていうものに、3人ともがはまってしまったんでしょうね。忙しさに楽しさが勝ったんでしょう。 


リトルモア福桜さん 渡辺さんが先日受けられたインタビューで「作る物が決まっていないのが楽しかった、その場にどんなハーブがくるかわからないライブ感がよかった」とおっしゃっていましたよね。 


 平井 そうね!ライブ感、アドリブ感はすごくありました。 


森岡 ページから日々の暮らしを楽しもうという意欲がすごく伝わってきます。このスタイリングに使っている器や花器は、普段おふたりが使っている物なんですよね。長く使っているものには力がある。博物館にある器とは別の美しさを感じました。だからこそ、写真とページに力を持たせていますね。 


平井 渡辺さんが料理に使った器を、私が別のページで花活けに使ったりもしています。 


森岡 写真の光のトーンにも特徴があるのかな。こういう光で見るからよく見える、おいしそうに見える。 


平井 雑誌とかだと先撮りしていかないとならないから、その季節と光がずれてることが多いですよね。この場合、秋の花と料理をまさに秋に撮影しているから、季節ごとの光がばっちりあっている。 

森岡 光と物との相性を大段さんは大切にしてらっしゃる。それを積み重ねた、365日の「花と料理」は圧巻ですね。 


平井 贈り物にしてもいいですよね。前に渡辺さんの365日の本を会社の送別会のプレゼントにしたことがあるってどなたかから聞いたんです。送る人へのメッセージを、部署の人それぞれが自分の誕生日のページに書いていく、と。めくっていくとメッセージとともに書いてくれた人の誕生日もわかるっていう。 


森岡 へえ。素敵なアイデアですね。この『花と料理』なんて誌面に余白があるからぴったりではないですか。 


平井 今回、表紙を2パターンも作ってくださったんです。スープのバージョンとバケットのバージョンと。自分の好きな表紙、送る人が好きそうな表紙。選ぶ楽しみがありますよね。